十七歳の地図
「オザキが来てるっ!」病棟がにわかに騒がしくなった。入院しているプロデューサーのお見舞いに、オザキユタカがやってきた。その時、僕はまだ中学生だった。
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有名人らしかったから、サインをもらいに行った。病室に色紙などあるわけはなく、僕がさしだしたのは、コクヨの罫線付きレポート用紙。その薄っぺらい紙に、彼は快くサインしてくれた。「名前は?」彼は、僕の名前と日付を書き込んだ。入院している子供を励ますミュージシャン、というと聞こえはいいけれど、僕はオザキユタカが何者か知らなかった。そして、彼の音楽を聴く事もなかった。
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大学のサークルで、カラオケの時にオザキユカタを歌った友達がいた。テレビ画面に滲んだ「作詞・作曲 尾崎豊」の文字が、病院での記憶と結びついた。ああ、これがあの人の歌か。
それから何年も、僕は尾崎豊の曲を聴いてきた。傾倒、というのとは違う。僕は、彼のように生きたいとは思わなかったし、カッコイイとも思わなかった。しかし、自分が一番見捨てられていると思ったとき、自分で自分自身にさえ愛想が尽きかけたときに、心に届いたのは、彼の歌だった。他の誰でもなく、彼の歌だけが、届いた。芸術には、もしかしたら人を助ける力があるのかもしれない。そんな風に思った。
2001.5.27
「17歳の地図」は、尾崎豊のファーストアルバムである。収録されているもののほとんどが、尾崎豊の代表曲になった。後年、本人をして、「デビュー作を超えられない」と悩ませたアルバム。あれから、10数年。尾崎豊の歌は、今も流れ続ける。世間の評価はいろいろあるし、彼の歌に決して共感することのない人も、沢山いる。それでも、彼の歌は消えていないし、今日でもなお街角に流れ、そして誰かの心に届いている。
- 街の風景
- はじまりさえ歌えない
- I LOVE YOU
- ハイスクール Rock'n'Roll
- 15の夜
- 十七歳の地図
- 愛の消えた街
- OH MY LITTLE GIRL
- 傷つけた人々へ
- 僕が僕であるために
某月某日
管理者は、地理が全く持って苦手であって、サンタクララという場所が、シリコンバレーなのだということに気が付いたのは、着陸10分前だった。
「なんか谷みたいになってるけど、ひょっとして、ここってシリコンバレー?」国際空港というよりは、うらぶれた公民館のような入国管理事務所を通ると、そこはシリコンバレーだった。
ここに多分、観光客というのはいないのであって、世界中何処にでもいるはずのバックパッカーさえもいない。街には、Cisco, Compaq, Nortel, Dell, Apple といった業界の有名どころから、bea, Novell, Netgear 等のちょっと通な感じの会社まで、あらゆる「ハイテク産業」のビルがあふれている。ホテルの窓から、昔自分が担当していた(させられていた、いや、はめられた)製品の会社が見えたりするのは、なかなか渋い。もちろん、「ここって、ついこの間まで、xxxの本社だったよね」という感じで、消えてしまう会社も少なくない。
ある種、アメリカのステレオタイプである、ボロボロの車は少なくて、Porsche, BMW, Mercedes, Lexus, Acura, Volvo の最新モデルが、駐車場を埋めている。つまり、斜陽と言われつつも、シリコンバレーには、まだ金がある。だから、別にミーティングのゲストにマジック・ジョンソンが来ていたりしても不思議ではない。
マジック・ジョンソンは、元 NBA の選手ではあるが、現在は映画館チェーン、珈琲屋のフランチャイズ(羊ページでさんざん言ってるスターバックスだが)、レストランチェーン、スポーツクラブチェーンを経営するオーナー社長だ。
「初めて、自分のオフィス、自分のデスクに座り、足を投げ出して、秘書にコーヒーとドーナッツを頼んだ。それが、自分の夢だった。」それは、もちろんある種の誇張だろうが、彼の夢は、「ビジネスマンになること」だったのだそうだ。NBA という輝かしい経歴を経て、ついに彼は「ビジネスマン」になった。そんな元 NBA のスーパースターの言葉を、IT 業界の「ビジネスマン」達は、どんな思いで聴いたのだろうか。少なくとも、僕はコーヒーが嫌いだし、朝からドーナッツを食べたいとも思わないけれども。
成功は、道の両側にある。例えば、名もない学生が興した企業が、全米を代表する企業に成長し、無数のオフィスを並べている。HP も Sun も、みんなそうして大きくなった。
もちろん、成功するということは、誰かをうち負かすことでもあるし、足蹴にすることでもある。それはネガティブでシャイな考え方だという気分もある。そうは言っても、サンノゼのダウンタウンを少し歩いてみると、そこにはやっぱりホームレスがいるし、雑然とした小さな家々が並ぶ、うらびれた通りが続いているのだ。
空調の効きまくったホテルで、次世代インターネットに関する話題が飛び交っている世界と、そこから数キロ先の路上で、なにやらアイスクリームのようなものを売っている老人の世界とは、やっぱりとんでもなく違う。良い意味も、悪い意味もなく、事実として、シリコンバレーは、今の時代の成功者のための街だ。
さて、ホテルの前に、路面電車みたいなものが走っている。一日、乗り放題で3ドルなので、サンノゼの太陽がギラギラする中、ぶらり路面電車の旅をしてみた。写真も撮ったので、それはまた帰国してからということで、、。
注1:地理が苦手というよりも、地理を気にしないという方が正解。
注2:本来はビジネスパーソンでしょうが、日本語としてはあまり定着していないので、ビジネスマンという表記にしています。
某月某日
と、いうわけで、今週はアメリカに出張してまいります。
サンタクララに現地集合という、素敵なセッティングになっていますので、ぶらり行ってみたいと思います。
もちろん、荷造りなんて、してません。朝起きてやります。なので、きっと、パンツの数が足りないと思います。あと、管理者は旅行に行くときに、バスタオルを詰めてしまう癖があるので、荷物が肥大化するのですが、今回はやめておきます。
現地にはいちおう愛機、ThinkPad(勤務先はIBMではない)を持っていきますので、もしかしたら、更新するかもしれません。帰ってくるまでに、AT&Tのサーバーの調子が戻っているといいなぁ、、。
注1:つい合宿気分で、バスタオルとか、洗濯干用のロープとかを入れがちです。
某月某日
今日の持ち物:
- サングラス
- Rio800
- 小説
- Palm Vx
- IDカード
- カメラ(Contax T2)
- 携帯電話2台
- 財布
- 名刺少々
通勤仕様。会社に行かないときは、IDカードと名刺は持たない。カメラは、なんか必要な気がする。最近買ったmp3プレーヤーRio800は、いつも電池が切れている。小説は、「ノルウェイの森」。また読んでるのかという話もあるけど、このあいだ久しぶりに読んだ「カンガルー日和」が面白かったから、、。
「今日はお仕事ですか?」徹夜明けの腫れぼったい目で、黒板に書かれた土曜日のランチメニューを睨んでいる僕に、パスタ茹係り兼ウェイター氏が尋ねた。
テラスに青々とハーブが揺れる季節の変わり目、メニューも少し変わってきていた。目新しい、バイ貝とブロッコリーのパスタを喰う。なるほど、ちょっとヌメヌメしてないか?これ。
食後。コーヒー嫌いも、エスプレッソは飲める。300円の追加。
「ごゆっくり」他に誰も客のいない店内。サーブするウェイター氏も、昨日は遅かったらしく、あくびをかみ殺し気味だ。それでも、カップの持ち手はちゃんと左で出していく。
「手相の勉強をしているんですけど」駅前で、見習いの手相見に声をかけられる。しかも、2人に立て続けにそうされると、なんだか落ち込む。僕は思い迷っているように見える?
フリーの風景ソフトで、季節はずれの雪山を描いてみたり。フラクタルが生み出した、雲と、土と、雪。世界の何処にもない景色。遙か彼方に見えるのは、氷山かなぁ。
某月某日 表参道
[click to full size photograph] 表参道あたりを、プラプラ歩いていると、気になるモノが。
わけの分からないモノではあるが、言わんとすることは分かる。
「う、、ウシ?」そいつらは、数頭の群れになって、ショーケースにうずくまっていた。
背中の微妙なカーブと、一頭毎にまるで違う個性的な模様。つのはピカピカ。いったい何の役に立つのかは分からないが、とにかく「欲しい」。でも、これは売り物?
実はこいつら、ドイツからやってきた家具である。「スツール」というのが、この牛たちのもう一つの存在意義。しかも、「天然の牛の毛皮にまたがることで、リラクゼーション効果が期待できる」という。
LA VACA。そんな名前のこの牛は、ちなみに59,000円。子牛のLA VAQUITAもあって、そちらは39,000円だって。
注1:なんかこの文章、雑誌の商品広告みたい。
注2:買ってませんよ。だって、スツールいらんだろ。
某月某日
電車で、向かいの席に座った女性。
誰かに似ている。あるいは、忘れてしまった誰かなのか。
左手の薬指に、指輪。ノートの真ん中に線を引いて、左側に失ったものを、右側に得たものを書いてみる。そんな話が、村上春樹の小説に出ていたっけ。
多分、綺麗な人だった。でもやがて、その顔も忘れてしまった。
サングローズ
[click to full size photograph] 旅先に持っていく音楽は、自分が本当に聴きたい音楽。
その夏、南の海を見ながら、僕が聴いていたのは彼女の歌だった。その時、僕はまだカセットテープのウォークマンを使っていた。悲しい歌が多かった、でも落ち着くことが出来た。
熱に浮かされたような季節で、僕は今よりも少しだけ若く、そして、脆かった。彼女の歌の脆さが、僕を惹きつけたのだと思う。
今度の Cocco の、最後のアルバムには、光が入っている。歌は、もう悲しくない。
歌うことが、自分を癒すための何かだったとしたら、その意味での歌というのは、彼女にとっては、もういらない。そういう、ことかもしれない。
いつか、また、別の形で彼女に会えるといいなと思う。
- 珊瑚と花と
- わがままな手
- Why do I love you
- 羽根
- 美しき日々
- 歌姫
- 風化風葬
- Still
- Deram's a dream
- 星に願いを
- 卯月の頃
- 焼け野が原
- コーラルリーフ
Mastered by Shingo 'MT' Miyamoto. 2001 VICL-60723