某月某日
「ピッチャー、第3球を振りかぶって、、投げました、ボウル。」AMラジオから聞こえてくるプロ野球中継。おぼろげな記憶をくすぐる、夏の音。テレビ中継では、ちょっと違うのであって、AMラジオ独特の、あの感じが大切。
某月某日
床屋にて。
シャンプーの後タオルをまかれ、鏡に映った自分の姿。
それを見て思った。割とターバン似合うかもしれない。
某月某日
恋人と横浜でロマンティックな夏の一日を過ごす。
それは全く悪くない考えだが、7月後半のここ数日に限って言えば、お台場にでも行っていただいた方が良い。なぜなら、7月28日までの間、港の爽やかな風をぶちこわす数千人のシステムエンジニアが、みなとみらい21地区に突如として出現するからだ。そう、毎年恒例のTechED in Yokohamaが今年もやってきたのだ。
TechEDというのは、Microsoftが主催する、Windowsテクノロジーに特化したカンファレンス。世界各地を巡業していて、日本では梅雨明け前後の時期に開かれる。このイベントは、国内のITカンファレンスとしては、最大級のもの。西海岸のカラリとした海風とは少し違うが、それでも、日本のベイエリア横浜で、ニセ(かなり)シリコンバレーみたいな気分が味わえる、ある種SEのお祭りだ。
もちろん、彼ら(僕もか)は、別にカップルに害をなすわけではない。しかし、そこはそれ、人数が多くていかにも人目に付くし、やはり、時々世間から逸脱してしまったようなSEもまじっていたりする。僕的には、やはりこの時期に、あえて横浜にいくことはお勧めしかねる。誰も、デートの終盤、夜のとばりがおりかけた臨港パークで、SE数千人の行列に囲まれたくはあるまい。まあ、一日の大半、我々は会議場に缶詰にされているので、そんな目に遭うのはよほど運の悪い人なのだが、事実、山盛りのSEの中に突っ込んでしまったカップルというのも存在した。
ところで、「世間から逸脱してしまったようなSE」というのはどういうものなのだろうか。SEとは言っても、大半は普通の人だ。もちろん、プロだから、口を開けば、ワケワカラナイ用語が山ほどでてくるのではあるが、他に変わった点はあまり無い。近年はインターネットの台頭で、コンピュータ業界の地位は、飛躍的に向上した。それに伴って、SEになる人の層も、大きく広がっているし、待遇や社会的地位も向上したと言える。一頃SEと言えば、「基本的人権が適用されない人びと」あるいは、「文化的で衛生的な最低限度の生活を送っていない、違憲状態の人びと」だったようだが、最近はだいぶましになった。IT産業は、比較的新しい分野だけに若い人が多く、また、女性のSEも増え、下手をすると「お洒落な職業」と勘違いすることだって夢ではない。
しかし、びっくりするような珍獣級の人もわずかにいる。それは、「古き良きSE文化を代表する文化遺産」と言ってもよい。実は、普通の人が増えてしまったSEの世界なんて、進化をやめてしまったシーラカンスみたいなもので、もはや面白くないのかもしれない。理解不能寸前(あるいは、その一線も越えている)人びとこそが、新しい時代を切り開くのだ。(ただし、僕はそこまでして切り開きたくないが)
というわけで、昨日目撃した中で「一番凄かった珍獣SE」はこんな感じでした。
- 30代中盤、男、体長160cm前後、かなり太め
- 伝説のOAサングラス着用(室内で着用)
- 妙なぼっちゃん刈(くりがしら先生似)
- 携帯電話はモモ(ピンクの熊の方)のアンテナ付き
- 謎のウォッシュが施されたジーンズ with サスペンダー(サイズ不明)
- 斬新な水色・紺・黄色チェックの半袖シャツ(吐き気がする色)
- テディーベアなボディー(ただしお肌は色白)
人を外見で判断してはいけないと思うし、他人の外見をどうこう言えるようなセンスを、自分自身が持っているとも思わない。しかし、このビジュアル・インパクトは、あまりにもすごい。個々の要素の強烈さもさることながら、それらのコーディネイトによって生まれた独特の「テイスト」は他者の追随を許さないものがあった。特に、全体的にコミカルな印象をかもしだしているにも関わらず、オフのヤクザか、金成日かというようにサングラスを着用しているのがポイントだ。
僕は多様な価値観に対して、寛容であろうと心がけているから、「不愉快な服装」ぐらいまでは許す。しかし、このような「不可解な服装」はまことに遺憾。SEが、本当に一般の市民として市民権を得る日は来るのだろうか、、。(そんなにおおげさな事ではないが)
注:Microsoftの本拠地はシリコンバレーではなく、ワシントン州なのだが。
某月某日
つまり、「事実」といっても、その伝え方には、いくらでも幅を与えることができる。前回の[今日の一言]と、同じ日の出来事を、全く違う視点で書いてみると、こうなる。
オフィスを出ると、もう午後の11時半近く。蒸し暑く、だるい疲労感がただよう、いけてない深夜。一人が、ポツリと言った。
「あのさぁ、ハイアットって、いいよ。」
なるほど。そういえば、あんまり近くにあるので、今まで行ったことが無かった。「じゃ、行っとく?一杯飲んどく?」ということで、行ってみた。高いと言っても、カクテル1杯で2,000円はないだろう、という読みのモトに(当たっていた)、物見遊山で一路ハイアットへ。
入り口がよく分からなかったが、とにかくベルボーイが立っているドアにたどり着いた。見るからに、キョロキョロした3名だったが、珍しく全員スーツを着ていたので、特に連行されたりはせずに、フロントを突破。
いよいよ、内部へ。
・廊下にて
「ここって、大声出したらやばいよね。そういう雰囲気じゃないもんな。へへへ。」
「ホントに、こっちでいいのかよ。なんか、景色の高級感が増大してきてるよ。」
「ねぇ、俺、トイレ行きたいんだけど、、。」・トイレにて
「うおー、タオルが別々にかごに入ってるよ。」
「顔洗おうぜ、顔。」
「うーん、素晴らしい肌触り。これはいいわ。」・テーブルにて
「うーん、なんかこの酒、パイナップルの味がするなー。」(知らずに頼むな)
「オレ、コレダメだわ。シロップみたいな味だ。あの、パフェとかに付いてくる、真っ赤のサクランボが好きなら、美味しく飲めそうなんだけど。」(その割に全部飲んだ)
「、、。」(雰囲気に陶酔中)・締め
「やっぱ、割り勘はまずいよなぁ。」
「ゴールドカードないの、ゴールドカード。会社のやつ使おう。一応、金色だし。」
「週に一度ぐらいは来て、ビビらないように体を慣らそうよ。やっぱ、いきなりは、敷居高いよ。」
大盛り上がり。別に、金持ちになりたいとは思わないけれど、こういう所に平気でこられるお財布は欲しい。切実に、そう思ったのだった。
注:センチュリーハイアットではない。
某月某日
しっとりした絨毯の上を、歩いていく。7色の花を盛りつけた、中国風の花器。飴色に輝く、マホガニーの本棚。研かれた金属の光沢を吸い込む、深緑の石壁。にぶい静寂。
再び、エレベーターに乗る。地上数十階から見下ろす、街。梅雨の雨に洗い流され、澄みきった大気。ひときは眩い、街の灯り。聞こえてくるのは、賑やかなオールデイズの歌声と、浮かれたピアノのリズム。
ピシッとしたウェイターが運んでくる、冷たいカクテル。口をつけてから、アプリコットがキライだったことを思い出した。ざわめき、タバコの薄い煙。向かいに置かれた、オン・ザ・ロックスの氷が、ゆらりと動く。
気遅れさえしないなら、こんな場所で、お気に入りの酒を飲み比べてみるのもいい。このBARは、副都心の夜の中で、もっとも好ましい場所の一つ。いろんなことはどうでもよくなって、アルコールのひんやりした匂いだけが心地よい。少し高揚した、ゆったり感。
注:はっきり言って、初めて行ったのだが。